En hommage à SPI

SPIへのオマージュ

対戦記録 S&T#322 "Banana Wars"

中南米に対し、共産主義の浸透を"防ぐ"ために米国が軍事介入を始めたのは1950年からだが、アメリカ政府のカリブ諸国での軍事作戦は、共産主義が生まれるよりはるか昔、1898年の米西戦争までさかのぼることができる。

ソ連という敵が存在しないこの時代、アメリカの敵は、イギリス資本、欧州諸国の政治干渉、独立運動、現地の"慢性的な不正と無能"など、想像できるものすべてだった。先住民を征服したアメリカ的文明観"マニフェスト・デスティニー(明白なる使命)"は、カリブ海一帯への覇権主義を正当化するものだった。

好戦ムードの世論に後押しされた米国政府は1898年、キューバの領有をめぐってスペインと戦端を開いて完勝(米西戦争)、その後の中南米軍事政策は、セオドア・ルーズベルト(1901 - 1909)に"棍棒外交"として引き継がれる。


1898年から1934年までの中南米情勢をゲーム化した"Banana Wars"は、テンポよく進み半日で終えることのできる佳作です。

ゲームでは、カリブ海諸国での、米国の利益に反する政治・経済行為は、すべて"Crisis(脅威)"として単純化され、米国プレイヤーは"脅威"を軍事力で解決しなければなりません。"脅威"が継続し、多発発生すると米軍の軍事費が増大、サドンデスによるゲーム終了となります。

2020年12月27日の対戦では、午後1時から始まり、4時半にゲームを終えることができました。

Activista(活動家)プレイヤーが、穀物の国際相場を操作、戦争継続が困難になるほどのダメージをアメリカ経済に与えて勝利したのですが、果たしてこの当時、そんな高度な経済戦争ができる活動家がいたのでしょうか?

また、実際の米国の圧力は軍事力のみならず、外交・貿易にも及んだはずですが、ゲームでは軍事力による解決しか描かれていません。これは活動家プレイヤーが経済戦まで仕掛けられるのと対照的です。

カリブ諸国を実質的支配下に置くアメリカの帝国主義政策は、第二次大戦後は共産ゲリラ、ドラッグカルテル軍事独裁政権との戦い、CIAの陰謀へと姿を変えています。
すべての始まりを描いた作品として、"Banana Wars"は記憶に留めてよいゲームだと思います。

同時代を表したゲームとして、S&T#258"サンチャゴ湾攻略戦"があります。

【写真2】 カリブ海の10カ国がアメリカの覇権主義に対抗する。地理上の相関関係はゲーム上まったく関係ないので、極端な話、マップである必要もない。かなり子供だましである。

【写真3】 カードが導入された初のS&T付録ゲーム。60枚のカードによって大統領の政策の違いが表現されている。