En hommage à SPI

SPIへのオマージュ

Battles誌に「はずれ」なし

二百年間ロシア帝国の首都だったペトログラードは、その後、レニングラードと名を変え、現在はサンクトペテルブルクになっている。

1917年の十月革命によってペトログラードは、ソヴナルコム(人民委員会議)の首都となった。ロシアの支配下にあったエストニアリトアニアラトビアは独立を宣言したが、彼らの新たな敵がソヴナルコムだった。バルト三国民族主義共産主義の争いの舞台となった。

レオン・トロツキーは1919年10月、十月革命二周年を記念してペトログラードで演説を行った。奇しくも同じ月、白軍の北西軍団司令官ニコライ・ユデニッチは、ペトログラードを目的とする侵攻作戦を開始した。

ロシア内戦の中で、赤軍は何度もすべてを失いそうになったが、そのひとつがこのペトログラード侵攻である。
破竹の勢いの白軍に対し赤軍は全線で敗走、レーニンペトログラードの放棄を主張した。それに対し、ペトログラードを守ることの重要性を説いたのが、トロツキースターリンだった。

もしペトログラードを失えば、ボリシェヴィキにとって政治的にも戦略的にも壊滅的な打撃となる。ユデニッチの作戦が成功すれば、バルト三国フィンランドに対するロシアの脅威はなくなるだろう。



2021年6月13日(日)、YSGA例会でBattlaes Magazine#5「White October 1919」を対戦しました。

2010年の雑誌付録だったこのゲームは、短命に終わったエストニア第一共和国と、フランス・イギリスの軍事援助を受けた北西軍団(ANW)がペトログラード占領を目的として開始した、1919年の"十月戦争"を描いています。

戦闘システムはまったく独自のもので、こんな独創的なルールを見たことがありません。読んでいるときはどうなるかと思いましたが、対戦してみると見事に機能しました。

圧制者として描かれることの多いロシア人ですが、このゲームでは、内戦の混乱に乗じた敵と戦う市民です。特に、トロッキーが市内に登場してからの団結力がすさまじい (ルール上のことですが)。

この攻勢は、エストニア独立戦争史の中でも語られることはないようですが、実際にはユデニッチの部隊はペトログラードの一歩手前まで来ていました。市内では、白軍に呼応して武装蜂起まで発生しています (イベントで再現されています)。

歴史のターニングポイントとなりえた「White October 1919」は、ルールの完成度とテーマの選び方、その独創性から、名作と言っていいでしょう。

ゲームデザイナーのデビット・ボードレットはロシア内戦が専門のフランス人で、他に「La Bataille d'Orël Octobre 1919」を出版しています。彼は「White October 1919」で2010年度のチャールズ・ロバート賞を受賞しています。

日本語ルールとBattlaes Magazine#5の記事の翻訳はこちらにあります。


取り決めが必要な事項
a. Rout movement: "the unit must move its maximum MPs +2"の"+2"の単位は、MPかhexか?(8.2.6.D一行目は"the unit must retreat 2 hexes"となっている。)

b. Dense ForestからDense Forestへの攻撃は地形効果がゼロだが、Dense Forestへの二箇所のへクスからの同時攻撃で、第一へクスがDense Forest、第二へクスがMarshの場合、1. 地形効果はゼロとすべきか、2. Marshの地形効果(- 1)を採るべきか、3. MarshによってDense Forest to Dense Forest"が無効になったと解釈し、複数ある地形効果の中でもっとも高価な地形であるDense Forestの(- 2)を適用すべきか?

c. HQを使った二箇所のへクスからの攻撃で、片側のへクスサイドがMajor River、もう片側の地形がそれ以外のへクスサイドである時、Major Riverの"-2"は適用するべきか?

d. bとcが同時に存在する地形の場合、どのように判定するか(実際にあった)?

e. Demoralization: "Units with this marker may not make any move towards the NEAREST White unit."の"NEAREST"の定義。たとえば、一番近いWhiteユニットが2へクスの距離であるRed Unitが、Demoralizationによって移動しなけばならない場合、移動した結果が別なWhite Unitとが2へクスの距離になる場合、Demoralizationの条件を満たしたことにするか?包囲されかかっている時、どっちに逃げても敵ユニットに近づいてしまう。

f. 間違えやすいルール:戦闘時の補給切れチェックは、"at the start of each Combat phase (4.2)"と書かれているにもかかわらず、実際は戦闘後に"Low Ammo"になる("Low Ammo" after the action. (4.4))。戦闘開始時に補給切れであっても、既に"補給切れ(Low Ammo)"マーカーが置かれていない限り、そのユニットは通常の戦闘(攻撃側/防御側ともに)を行い、戦闘後にそのユニットが依然補給切れ状態なら"補給切れ(Low Ammo)"マーカーを置く。その場合でも、戦闘を支援したSupportユニットは(もともと補給切れでないなら)補給切れにならない。戦闘前退却を行ったユニットが、その退却の結果、補給切れの位置に移動したとしても、戦闘をしていないのだから、"Low Ammo"にはならない(4.4)。

【忘れやすいルール】
いずれのプレイヤーも、6以上のRPを持つことはできません。余ったRPはカウントされません。(3.1.2)

Tank, AC, HQ, ATはスタックに数えないが、これらのカウンターは1ヘクスに3枚までとする。(7.2)


【写真1】
Battle Magazine第5号(2010)の表紙

【写真2】
5ターンの終わり。
ペトログラードに肉薄する白軍。史実では、白軍は第4ターンでGatchinaを陥しているが、この時点でGatchinaは赤軍のものである。白軍はあと二回しか総攻撃ができない。
Krashoye Selo北にはレオン・トロッキーが潜伏している。

【写真3】
白軍の攻勢に対し、赤軍は雪崩を打って敗走した。白軍の進軍速度が速いので、赤軍「10/2rd」は敵の真っ只中に取り残されてしまった。

図の赤軍歩兵師団「10/2rd」は敵ZOCに囲まれ、赤矢印の方向にしか敗走できない。(本来は右方向に敗走しなければならない)
敗走先の敵ユニットとの距離が、移動前の(現在の)もっとも近い白軍ユニットとの距離と同じであるなら、そこに敗走してよい、というルールにしてよいと思う。