映画評「独裁者たちのとき」
「太陽(昭和天皇)」「牡牛座(レーニン)」「モレク神(ヒトラー)」のアレクサンドル・ソクーロフ監督作品、と言えば見ないわけにはいかないだろう。
棺に横たわったスターリンが、「自分は死なないし、これから先も死なない」と声を荒げるところから映画はスタートする。この映画は、記録フィルムをAIでデジタル加工したもので、冥界に集まったヒトラー、スターリン、チャーチル、ムッソリーニの四者の会話で進行する。
彼らは、お互いを嘲笑、揶揄し、己の陶酔にひたる。ヒトラーは、ホロコーストについて語ることはないが、パリを焼き払うことを怠ったことへの後悔を口にする。ムッソリーニは「ルビコン川を渡ればすべてが戻ってくる」と言い、愛人クラーラの死体に語りかける。
多くのセリフが明らかに悪趣味であるとしても、その不遜さは、厳かな人物の動作とモノクロームの美しさによってバランスが取れている。
イタリア語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、英語、ジョージア語で語られるこの映画は、ほとんどの観客にとって字幕ぬきでは理解できない作品だろう。映画館よりはギャラリーで、観客が自分のペースを決められるような場所での上映にふさわしいかもしれない。
チャーチルは独裁者ではないので、日本語タイトルはこの作品にふさわしくない。
原題「フェアリーテイル」
監督 アレクサンドル・ソクーロフ
2022年/ベルギー・ロシア
上映時間 78分/4月22日から渋谷ユーロスペースで上映
(AH) ギリシア・ローマ海戦
2023年3月19日(日)YSGA定例例会で、「(AH) ギリシア・ローマ海戦」を3人で対戦しました。
シナリオは、アクティウムの海戦。エジプトの人海戦術対ローマの科学技術の戦いです。
ローマ軍二十隻に対し、エジプト軍が十五隻というハンデがあるので、エジプト軍が勝つのは容易ではありません。エジプト軍三隻が沈められた時点で午後五時となり、ローマ軍優勢のうちに対戦は終了しました。
戦闘用ガレー船
高速攻撃型のガレー船 ”トライリーム” には、貨物を積むスペースがほとんどありません。喫水が浅く、悪天候に弱いため、沿岸沿いに航行するのが一般的で、夜間は陸に船を揚げ、乗員は陸上で食事と休息をとっていたようです。
150~200名の漕ぎ手は、Auletesと呼ばれるラッパ手の号令で動きました。ひとたび乗船したら漕ぎ手の視界は遮断され、持ち場を離れることはできませんでした。トイレもその場でしたため、三段の一番下の漕ぎ手は悲惨な目にあいました。
船内は、騒音のおかげで会話も不自由でした。200名の漕ぎ手を統率し、望むような操船をするのは容易ではなかったでしょう。指揮官からAuletes、Auletesから漕ぎ手への伝達のタイムラグも少なくなかったと思います。
操艦では敵・味方艦の位置だけでなく、風向きも考慮しなければなりませんでした。風上の船は他の船よりも大きく揺れる傾向があり、僚艦にぶつかる危険がありました。オールが絡まったら最悪です。
風に逆らって漕ぐことは賢明ではなく、敵側は通常、そうさせようとしたでしょう。左舷や右舷に強い風が吹くと、舵取り兵(Kyvernetes)は進路を保てなくなります。舵が役に立たない時は、左右の漕ぐ強さを変えて針路を維持する必要があります。
風と潮流のオプションルールを採用すると、何もしなくても衝突によって損害がどんどん出るのですが、あながち誇張ではないかもしれません。実際には、ゲーム開始時の、横一列の隊形を組むのでさえ熟練を要したのですから。
Ram攻撃
Ram攻撃は、時速7~20kmの速度で行われました。敵艦に当たる角度が90度に近いほど穴は開きやすく、当てる角度が浅い場合、それなりの速度が求められました。
衝突の直前にオールは引き上げ、当たる最後の数十メートルは慣性による移動です。
ボーディング・バトル
航行の安定性に問題があるトライリームでは、乗船する戦闘員の数が制限されていました。積載物は船をトップヘビーにするため、最小限にされました。
操艦が上手なアテネ海軍は、少数の戦闘要員しか乗せず、Ramを突っ込み、すぐに引き抜く戦術を得意としました。この戦法の欠点は、RAMが刺さったまま抜けないと、望まない搭乗戦闘になったり、第二の敵艦からRAM攻撃を受けてしまうことです。それでもアテネ海軍は、この戦術で数々の勝利をおさめました。一方、ペルシャなどのレベルの低い海軍は、大勢の戦闘員を乗せて数で圧倒しようとしました。
戦術
練度の高い艦隊は、次のような機動戦ができました。いずれも、敵艦を上回るスピードが求められました。
【3つの代表的な戦術】
- ディークプルス(Διέκπλους)。敵陣を突き破った後(a)、Uターンして敵背面を攻撃する(b)。
- キクロス(Κύκλος)。多勢に無勢の時、防御の輪を形成し維持する。
- ペリプラス(Περίπλους)。正面の敵を牽制し、第二艦隊が側面を叩く。
ローマ時代になると、スピードは決定的な要素でなくなりました。ローマ帝国は重歩兵を乗せた、より大きく遅いガレー船を建造、先端にコルヴス(Corvus、敵艦にかける立橋)とシプリア(Scorpio) をつけたのです。シプリアとは、矢や槍を発射する大型の弓台です。ローマ兵は敵艦に乗り込み、全員を虐殺して、海戦を陸戦に変えました。シプリアとコルヴスは、ローマ海軍の主要な兵器であったとされています。
【ルール覚書】
- Ram攻撃を行い、判定によってCrippledになった船は、次のターンでBackwater移動をするべきか?→しないでよいことにした。
- bPを同一ターン内に2回連続して行ってよいか?→よいことにした。
- Ram攻撃の結果Backwaterを行う船の移動速度は、自動的にCruising speedである(BackwaterをFull speedで行うことはできないから)。
- Boarding Groupを他船に派遣したことによってMarineが減った船は、Cargo limitを再計算し設定しなおさないといけないか?→面倒なのでゲーム開始時のCargo limitのままとすることにした。
- Holedの結果Surrenderした船は、自動的に敵によるCapture状態にならないので(Boarding Battleの結果Surrenderした船には直ちに敵がBoarding membersが送りCaptureできる)、敵がその船をCaptureするには、Grapplingを行い、Boarding Groupを派遣してCaptureしなければならない。→面倒なので、Boarding BattleのSurrenderと同じにした。すなわち、Holeの結果Surrenderした場合、自動的に敵によるCaptureとする。
- Flame Effects(P21)の"8 to 10"でDeck CrewとMarinesが半分になるのはそれらが除去されたからではなく、消火活動にあたるためである(火が消えたらそれらの人員は復活する)。
- 天候の設定
Triremeではゲーム中に風向きが変わることはなく、常に一定の方向から吹く。今回の対戦で、風力は終始一定、Sea Stateは常に"flat"、Ocean CurretによるDriftのみ採用、Tidal Current、River Currentのルールは用いなかった。
YSGA 2月25日(土) 兵器システムの調査
SPIの戦術級には実験的なものが多い。
というか、すべてが実験ゲームではないだろうか。
そこには、ゲームデザイナーが打ち立てたセオリーがあり、仮説があって、兵器のスペックがある。
その結果どういうゲーム展開になるかはやってみてのお楽しみ。プレイヤーは、ジムダニガンの高邁な思想と研究結果にひたすら感銘を受けるべきであり、SPIゲームに、バランスとか、プレイアビリティを求めてはいけないのです。
今回YSGAの例会で対戦した「(SPI) TANK!」は、「(AH) PanzerBlitz」の4年後、「(AH) Panzer Leader」と同じ年に発売されたゲームです。
1ユニット戦車1輌の戦術級スケールで、実験的なシステムの割にはよくできたゲームです。プロットによる同時移動もスムーズに機能します。15台ぐらいの戦車でもスピーディに処理できるのです。
遭遇戦はスリリングなもので、同時移動ルールの結果、予期せぬ場所で予期せぬ敵と、予期せぬ形で戦闘が始まります。一度交戦が始まると離脱が困難になり、敵に後ろを見せることはできません。激しい射撃戦によって、あっという間に勝敗がつきます。
ゲーム付属のシナリオは、プレイヤーが独自のシナリオを作るための素材というべきもので、プレイヤーにはある程度の軍事知識と、面白い勝利条件が作れるだけの技量が求められます。
「PanzerBlitz」より簡単なルールのおかげで、1日に3回対戦できました。アバロンヒルの商品として完成されたゲームと比べるなら、半完成という印象がぬぐいきれないゲームですが、それなりにリアリティがあるので、複雑なゲームに飽きた時によいと思います。
狩りに向かうV号駆逐戦車。
YSGA第402回定例会
2022年12月24日(土)の対戦は、1918年のフィンランド内戦を描いた「(GMT) All Bridges Burning」。
三人で対戦するCOINゲームで、赤衛軍、白軍、中庸派に分かれて戦う。ドイツ軍はBotルールによって動かします。
【感想】
赤衛軍と白軍が史実通りに本気で争うと、中庸派が独り勝ちしてしまう(過去2回の対戦がそうであった)。しかも中庸派はゲームデザイナーが考えた架空の派閥である。内戦が激化すればするほど赤衛軍と白軍が消耗して中庸派が勝利しやすくなるというのは、中庸という設定上、いかがなものか?本来は、内戦の危機を回避してこそ、中庸派が勝利するべきだろう。
【疑問点その他】
"1917"カードデッキと"1918"カードデッキの扱い。"Revolt! Povotal Event"カーが"1917"デッキから出た時点で、未使用の"1917"カードは捨てて"1918"カードデッキに移行するべきではないか?
カード#18"Conduct the Politics Phase"は、プレイヤー全員が"Politics Phase"を行うのか、カードを引いたプレイヤーだけか?
"Martch"では相互に隣接する3spacesを移動できる。一回の"March"の中で、"Helsinki"にいるCellが"Uusimaa"に移動、そこにある"News"をピックアップして"Helsinki"に戻ってよい。
Playbook P18では、Limited Commandを行ってから、Full Commandに切り替えている。
Command & Special Activity(SA)で、Commandを実行せずSAのみ実行していいかどうか、事前の取り決めが必要。
"Train"マーカーは、"Train"サークルか"Town"の上しか置けない。
YSGA第401回定例会
2022年12月11日(日)、横浜YSGAで「(AH) ギリシャ・ローマ海戦」を4人で対戦、General Vol.19 No.4掲載の"SYBOTA II"シナリオを行いました。
紀元前427年のペロポネソス戦争を扱うこのシナリオは、コリキュラ(Corcyraean)対アンブラキコス(Ambraciot)とレフカダ(Leucadian)連合軍の戦いを描きます。
本来、15ターン以降でアンブラキコスとレフカダが高得点を上げることができるのですが、10ターンまでしかできなかったので、コリキュラ優勢のうちにゲーム終了となりました。
【備忘録】
すべてのオプションルールを採用した結果、対戦のテンポが落ちて、戦闘と同等の損害がDriftで出るようになった。天候ルールとFloating Wreckルールはなくてもよいのではないか?
【間違えやすいルール】
- RAM後、RammerはFull SpeedとCruising Speed両方可だが、TargetはCruising Speedしか出せない。RAM後、RammerはBackwaterしなければならない(Pauseとは書かれていない (英文P12))。Targetはどのような移動も可だが、Cruising Speedしか出せない。
- bP、bS、BackwaterはCruising Speedの時しかできない。
- bP、bS、Backwaterを行った次のターンはCruising Speedしか出せない。
- MarinesとArtillery engineもCargo Limitsのカウントに含まれる (P7)。他にカウントされるのはRenforced Bow、Corvus、Tower。
- 移動力1以下の船は、Driftにおいて"not under oar or sail"に分類される(「1移動力以下の船」であって「1移動しかしていない船」ではない)。