En hommage à SPI

SPIへのオマージュ

傍観する以外にない戦争の狂気

Verdun 1916: Steel Inferno
昨年11月に対戦したこのゲーム、カードの内容を知っている二回戦目からが本当に面白いということで、ゲームを熟知した我々は二度目の対戦を行いました(2022年2月27日(日)YSGA例会)。

プレイヤーである我々は、通常、プラグマテックな立場からゲームと関わりますが、フランス人が制作した「Verdun 1916: Steel Inferno」 からは、戦争の悲惨さ、無益さを感じ取ることができます。

今回のフランス軍は、勝利ポイント上の不利益を完全に無視して増援を行い、2ターンの終わり(ランチタイム)までにすべての予備ユニットをマップに投入させました。
結果としてドイツ軍が24もの勝利ポイントを得ることができ、攻守はその時点で反転、ドイツ軍は新たな攻勢をする必要がなくなり、防衛に徹して現状を守り抜けば勝つという特異な戦況になりました。ドイツ軍にはVerdunなどもやは必要ないのです。まだ56ラウンドも残っているのに。

史実において、フランス軍が全戦力をVerdunに注げなかったのは、Verdunに戦力を投入すればするほど他の戦線がおろそかになり、戦略的に負ける可能性があったからでした。
「Verdun 1916: Steel Inferno」でも、兵力を集めすぎるとフランスが戦略的に負けるようにできています。
他にも、ブルシーロフ攻勢、潜水艦作戦、ユトランド沖海戦、ロシア戦線、アメリカの参戦が上手にカード化されており、ヴェルダンに限定された塹壕戦でありながら、第一次大戦全体が俯瞰できるゲームになっています。

このゲームのよいところは、ルールが精査されていることです。
戦力が均一な積み木ユニット、CRTを使わない判定、スピーディかつ無慈悲なカードドリブンシステムは、前線の全体像に頭を使う余裕を与えてくれます。

そして、人命は湯水のように注がれます。文字通り「持ち駒」として投入され、損耗したユニットは後方のフレッシュな駒と交代、蛆虫の沸いた「NON EVENT」死体カードが、戦争の残酷さを伝えます。


The Dogs of War
昨年、イタリアのThin Red Line Gamesが発売したこのゲームは、「(SPI) NATO Division Commander」のルールによる「(SPI) BAOR」のリメイクで、発売後、わずか1週間で売り切れました。
ルールブック記載の参考文献にもトップに"SPI NATO Division Commander(NDC)"と書いていることから、同ゲームへのオマージュと言えるゲームです。NDCの態勢変更ルール、1/2交戦、TO/E、進出マーカー、航空CSP、コマンドポイントなどが移植されています。

Verdun対戦の後、インストプレイを行いましたが、このゲーム、自費出版の域を出るものとは言えず、ソロプレイだけならまだしも、対戦には適していませんでした。前作の「Less than 60 miles」もルールを発売後に全面改訂しているので、製品化までのルール精査が甘いのだと思います。

【写真1】 戦争のツケ。第5ターンになるとフレッシュな兵の代わりに蛆虫が沸いた死体が出てくる。

【写真2】 独軍が考え出した必殺コンボ。4枚捨ててでも集めた方がいいかもしれない。(ただし"Kronprinz"はnon-Event Barrageである。)

【写真3】 自作マップによるThe Dogs of Warインストプレイ