En hommage à SPI

SPIへのオマージュ

ウォーゲーマーから見た南スーダン

昨年12月19日、Bentiu(ベンティーウ)に派遣された国連軍がNuer反乱軍と交戦し、インド兵3名が死亡した。これは国連軍初の戦死者である。

四日後、John F. Kellyアメリ国務長官は、電話でSalva Kiir大統領とRick Machar(元副大統領)に停戦をよびかけたが、はっきりしているのは、両者には関係改善するつもりがまったくないことだ。

紛争の始まりは、Dinka族とNuer族の武力衝突と、それに続く、Rick Machar副大統領(当時)にかけられた"クーデター容疑"だった。Macharは容疑を否定しながらも、反政府軍を率いて油田地帯Bentiuを占領した。
(Salva Kiir大統領はDinka族で、Rick Machar副大統領はNuer族である。)

かつて南スーダン独立のためにスーダンと戦った軍 - いまだにSPLA(スーダン人民解放軍)の名を残している - は分裂した。スーダン内戦は、正規軍 vs 正規軍の戦いである。Macharが持っている軍は一個師団と言われる。
ここで見られるのは、政治的対立が民族的対立に拡大し戦闘になる、というかつてのアフリカ諸国で見られた構図だ。

市民の間には明瞭な恐怖が漂っている。Dinka族、Nuer族、いずれもその人種が理由で、他方の部族から殺害されているからだ。

Nuer兵はDinka族の民間人を収奪、殺害し、逃れた人々は国連に保護を求めた。Dinka政府兵はNuer族の家を襲撃した。市民はその場で殺害されるか、逮捕され永遠に戻ってこなかった。
Navi Pillay国連人権高等弁務官は、少なくともBentiuに一箇所、Juba(ジュバ、首都)付近に二箇所、大量の死体が埋められていると報告した。

殺害か逃亡によって、New Site(ケニア国境の都市)からNuer族はいなくなった。平和維持軍の任務は、スーダン政府からその国の国民(Nuer族)を守ることだ。
国連の発表では、12月15日以降発生した難民は189,000人であり、そのうち62,000人が国連の保護下にあるという。

現在、南スーダンに駐留する自衛隊は一個中隊強(330名)であり、主力はJuba国際空港、分遣隊がウガンダのEntebbe(エンテベ)にいる。他に国連軍に参加したのは、インド、ネパール、韓国、ケニア、モンゴル、中国、ルワンダカンボジアバングラデシュである。

米軍アフリカ指令は、150名の海兵隊をスペインからウガンダに送った(アメリカは表向きには平和維持軍を南スーダンに出していない)。海兵隊はこれまで400名のアメリカ市民を脱出させているが、Bor(ボル)での救出作戦時は米軍に4名の負傷者を出している。

国連が南スーダンに展開している兵力は、自衛隊のような施設隊を含めて75,000名以上と言われる。国連は「市民を守る」と宣言したが、その兵力は、広大な南スーダンを守るには少ない。南スーダンは、スペインとポルトガルをあわせた面積より広い。

12月23日、国連安全保障理事会は、南スーダンに駐留する国連軍を二倍の14,000名に増員すると発表した。
国連の増援は、スーダンリベリア、アイボリーコースト、コンゴに駐留する国連軍の中から行われるが、それにはその軍を派遣しているそれぞれの国の同意が必要である。この発表の翌日、安倍政権は、「国連軍の増援は望ましいことであり、日本政府は南スーダンから自衛隊を撤退させる検討を行う」と声明した。
増援を指揮するのは国連事務総長パン・ギムン(Ban Ki-moon)だが、彼は常任理事国からも能力を疑われている人物だ。

未確認情報では、Nuer反乱軍はBorの国連軍拠点を迂回し、首都Jubaを包囲している、と言われる。
政府軍報道官は4日、「わが軍はBorへ向けて進軍中だ」と語ったが、AFPの報道では、Juba中心部で1月4日、激しい銃撃戦が発生、砲弾の着弾音や自動小銃の銃声が響いたという。

同日、米国国務省は「治安状況の悪化から在南スーダン大使館の規模を縮小」し、大使館員の一部をKC-130でEntebbeに避難させたと発表した。海兵隊45名が米国大使館を守っているという。

一方、自衛隊PKO法と憲法9条で、いかなる敵とも交戦できない。

BBCは5日、Borに進撃していた政府軍が25km手前でNuer軍の待伏せにあい、司令官が戦死したと報道した。

今後の情勢から目をはなすことができない。