マイケル・ファスベンダーは、"みんなを不快にさせるデカチン(just makes you feel bad to have normal sized male genitalia)"、アンジェリーナ・ジョリーは"18ヶ月企画をほっておいた能無しの甘ったれ(a minimally talented spoiled brat who thought nothing of shoving this off her plate for eighteen months)"、レオナルド・ディカプリオは"見下げた奴(despicable)"。
ソニー・ピクチャーズ(SEP)の重役達が、大物俳優をボロクソにこき下ろしていた事実が判明した。12月11日、SEPの共同会長エイミー・パスカルは次のように謝罪した。
「私のEメールは無神経かつ不適切だったが、私自身を正確に反映したものではありません("The content of my emails to Scott were insensitive and inappropriate but are not an accurate reflection of who I am.")」
それは、アメリカ社会に対するサイバー攻撃だった。SEPの社内ネットワークが何者かに不正侵入され、エイミーらの社内電子メールがtwitterにばら撒かれたのだ。流出した電子メールの中には、オバマ大統領を人種的に揶揄するものもあった。
米当局は、この攻撃は北朝鮮政府の命令で実行されたと断定、攻撃に使われたマルウェアには、韓国への攻撃に使われたものと多くの類似性があるという。FBIの論調は、この攻撃はアメリカの主権への攻撃であり、一企業に対するものとみなすならそれは事件の矮小化である、というものである。
サイバー攻撃を受けたSEPは、映画「The Interview」の公開を中止したが、これは北朝鮮の最高指導者暗殺を題材にしたパロディ映画で、12月25日の公開を予定していた。
このSEPの決定に対し、多くのアメリカ人は、SEPが北朝鮮の前に屈したと考えた。オバマ大統領も記者会見で、「米国は、他国の独裁者による検閲を受け入れてはならない」とSEPを非難した。キム・ジョンウンの写真に「これが新しいソニー・ピクチャーズの社長だ」とキャプションをつけた画像も出回っている。
それに対し、SEPのCEOマイケル・リントンはCNNを通じて、「オバマ大統領もメディアも世間も何が起こったかについて誤解している」と反論、上映中止は興行会社の判断であり、「我々は映画館を保有しているわけではない。人々に見てもらいたいという欲求は常にある。」と述べた。
果たして北朝鮮は、これだけ洗練されたネットワーク攻撃ができる技術を持っているのだろうか?(そもそもマイケル・ファスベンダーの"サイズ"やアンジェリーナ・ジョリーの"おつむ"についての讒言がアメリカ社会への重大な脅威になるかは別として。)
北朝鮮はみずからの関与を否定し、アメリカとの共同捜査を提案している。今回のサイバー攻撃がCIAによる自演の可能性もあるが、SEPが上映中止を決定したのは、さらなる情報の流出を恐れたからであることは誰の目にもあきらかであり、アメリカ社会にとって経済的、政治的ダメージであることは間違いない。
SEPが人質にとられたのは数千万ギガバイトもの社内文書だった。2014年になって、低強度紛争に次ぐ新たな戦争手段 - サイバー戦 - が現実化したのである。